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第3回 | コイルのインダクタンス | コイルを使う人のための話(第1部)

第3回 | コイルのインダクタンス

第3回目の今回は、「コイルのインダクタンス」についてです。毎回の内容が、うまくつながらないかも知れませんが、コイルのことを知る上でお役に立てれば幸いです。

巻線型コイルのインダクタンス

第1回目で、コイルは電線を巻いたものだと話をしましたが、コイルのインダクタンス(L)と巻線の巻数(N)の関係は、概ね次のようになります(インダクタンスは、巻数Nの2乗に比例します)。

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但し、k :形状などで決まる常数 μe:実効透磁率

巻線型コイルの場合、巻数が2倍になるとインダクタンスは4倍になってしまいます。最近のように、低インダクタンスのコイルの場合は、巻数も少ないのと巻数は整数にしかならないので、巻数を1回増減するだけでインダクタンスの値が大きく変化します。

例えば、5回(5Turn)巻いた時のインダクタンスが4.7μHになるインダクタの場合、巻数ごとのインダクタンスの値は、表-1のようになります。

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この場合だと、10.0μHが中心値になるインダクタンスは作れないことになります。

参考までに、弊社のCER8042B(写真-1)の場合だと11Tで6.8μHになります。

セットメーカーの技術者の中には、上の式をご存じで「巻数、あと1T減らしてインダクタンスを○○にした、サンプルをお願いします」なんて方もいたりします。

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インダクタを開発する時には、巻数とインダクタンスの関係が、丁度E6またはE12シリーズに出来るだけ合うように、苦労して形状を決めているのです。

巻線型のインダクタの場合、特注でインダクタンスを標準外に設定(巻数を変更することで)することも可能なのですが、インダクタンス値によっては、絶対にできない場合もあるのです。

実効透磁率について

空芯コイルに磁性材料を追加しても、実際のインダクタンスは材料の透磁率の倍数には増えません。これは、コイルから発生した磁力線が全て磁性材料の中を通らないことが原因です。そこで、実際にインダクタンスが何倍になるかの目安として、実効透磁率と言うのがあります。

磁力線の通り道に空間(エア・ギャップ)があると、実効透磁率は大きく低下します。このため、磁性材料単体の透磁率が非常に大きい材料を使用しても、実効透磁率は思ったほどは大きくなりません。 従って、インダクタを小型化しようと思って透磁率の高い材料を使用しても、限界があるのです。

ギャップについて

前回お見せした、7G17Dの仕様(表-2)ですが、温度上昇許容電流の値が全て同じだったのは、実は直流抵抗が同じだったからなのです。そうです、直流抵抗が同じと言うことは、中の巻線が全て同じと言うことなのです。

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では、どうやってインダクタンスの値を変えるかと言うと、インダクタの形状や巻数を変更しなくても、μe(実効透磁率)の値を変えることで、インダクタンスの値を変えることができます。

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実際には、磁性材料のフェライトコアの一部にギャップ(隙間:図-1)を設けて行います。 ギャップを設けることで、フェライトコアの材質を変更することなく、実効透磁率(見掛け上の磁気特性)を変更することができます。

但し、ギャップの大きさで変化するのはインダクタンスだけではなく、直流重畳特性も同時に変化します。

ギャップの大きさと、インダクタンス、直流重畳特性の関係は、下のグラフ-1のような関係になりますので、両方のバランスを見ながらギャップの大きさを決めます。

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改めて表-2を見て頂くと、右図のようになっているのが分かってもらえると思います(インダクタンスの大きい方が、ギャップが小さい)。

「損失を減らすためには、電線の巻数を減らして抵抗を下げ、ギャップを狭くしてインダクタンスを増やして、そうすると直流重畳電流特性が低下して....、困ったな~!」と言うことになって、インダクタの構造のどの部分に、どう言ったギャップを設けると一番良い特性になるのか、ここがコイル・メーカの腕の見せ所になります。

著者紹介

星野 康男
1954年生まれ。コイルが専門のレジェンド・エンジニア。
1976年に相模無線製作所(現在のサガミエレク株式会社)に入社。入社直後から技術部門に勤続。
技術部長・役員を歴任し、顧問として仕事の手助け・後輩の指導を続け2024年3月末に退職。わかりやすい技術説明には定評があった。
趣味はカメラ。好きな動物は猫(と鈴虫)。

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