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第10回 | コイルに関わる色々なはなし | コイルを使う人のための話(第2部)

第10回 | コイルに関わる色々なはなし

電気用図記号

回路図を書くときに使用する記号のことですが、JISのタイトルで「電気用図記号」となっています。この記号ですが、1997年にIEC規格の変更に伴いJIS規格も変更になりました。この変更で、大きく変わったのが抵抗器で図-1のようになりました。

コイルも、図-2のようになりましたので、この連載でも途中で気が付きコイルの記号の方は変更しましたのが、抵抗に関しては見易さもあって従来の表記を採用しています。

抵抗器
インダクタ

世の中でも、抵抗器に関しては両方の表記が混在しているのが現状ですが、既に学校の教科書の表記は2004年から変更になっているようです。 この先は、従来の記号を知らない人が増えてくるのでしょうね。

もちろん、IEC規格やJIS規格では、規格書内に使用する記号などは新しい表記を採用しています。皆さんは、どちらを採用しているのでしょうか?なお、他の部品の記号も合わせて、詳しく知りたい方は、JIS C 0617 電気用図記号 をご覧下さい。

プリント基板とプリント配線板

日本ではあまり気にしていないように思えますが、英語圏の世界では区別されているようです。ちなみに、部品を実装する前の状態がプリント配線板(PWB:Print Wiring Board)で、部品を実装した物(回路として機能する物)がプリント(回路)基板(PCB:Print Circuit Board)だそうで、確かに言われてみると両者の違いは分かりますね。

例えば、PWBの不良とPCBの不良では、意味している内容が全く異なる訳で、そう言う面では使い分けをした方が分かり易いのかも知れません。

4端子の効果は大きい

電子部品の取り付け強度(プリント基板からの剥離強度)は、重量が同じならば端子の面積(大きさ)と位置により大きく変わってきます。また、落下時の衝撃の大きさは、コンクリートのような堅い物の場合は数千G(但し、作用時間は短い)になると言われています。

このため、2端子構造のコイルの場合は、衝撃を受ける方向(一般に、端子の無い方向からの衝撃に弱い)により耐衝撃性に差があり、最悪の場合破損してコイルがプリント基板から外れてしまう場合もあります。

これを、写真-1のように4端子構造のコイルにすると、端子数が追加になって接地面積が増えた以上に、落下衝撃に対する耐衝撃性が大きく向上します。

写真-1CVE1918HAは、4端子構造にすることで耐衝撃性を大幅に改善した、車載用のインダクタとして開発されています。

CVE1918HA

トロイダルコイルの巻数

トロイダルコイルの巻数は、通常コアの穴の中を貫通した電線の数が巻数になります。

従って、写真-2(A)(B)では見た目は異なりますが同じ巻数(写真の場合は1回)になります。

参考までに、写真-2の(A)(B)のコイルのインダクタンスを測定してみましたが、どちらの場合も約2.0μH(at 100 kHz)になりました。従って、実装するときに、どちらの形状になってもインダクタンスは変わりません。

トロイダルの巻数

また、第7回の高周波トランスで出てきた写真-3の穴が2個のフェライトコアの場合は、片方の穴を貫通すると1/2回(両方で1回)になります。しかし、1/2回1回の両方で実際にインダクタンスを測定してみたら、インダクタンスは1:4(巻数の二乗)ではなく約1:2でした。

写真-3のコア形状の場合は、図-3のように、2個のトロイダルコイルが直列につながったと考えられるので、

Lx = L1 + L2

と考えることができるからでしょう。

穴が2つのフェライトコア
バルントランスの巻線

フィルタ回路の違い

例えば、3次のL.P.F.には図-4のようにコイルが2個T形回路と1個π形回路があります。このL.P.F.の周波数特性はどちらも同じ特性になりますが、帯域外の高い周波数で考えると、インダクタは開放、コンデンサは短絡と同じになるので、図-5のように置きかえることができます。

ここで、外部からのノイズが信号ラインに載ったときのことを考えてみると、C-L-Cπ形回路の方はフィルタの両端が短絡(インピーダンスが低い)される形で終わっているので、ノイズはグランドに流れます。

ノイズを考慮して考えると、高い周波数でインピーダンスが低くなる図-4C-L-Cπ形回路の方が良さそうです。 しかし、コイルメーカとしては、L-C-Lの方を採用して欲しいですね…。

T形とπ形の違い

L.P.F回路

4in1(4連)の仕様のインダクタ

AVアンプは多チャンネル仕様が多いのですが、デジタルアンプにすることで小形化が可能になりました。それでも、1スピーカあたり2個のコイルを使うとすると、5.1chでは実に12個のインダクタを基板に実装することになります。

ここで問題として上がってきたのがインダクタの実装工数で、少しでも実装工数を下げるために2in1(2連)仕様のコイルを使っても6回の部品差し作業が必要です。

最終的に、4in1(4連)の仕様のインダクタとして、写真-3 DVX1315Hを作ることになりましたが、4連となると1個の部品から合計で8本の端子が出ているので、コイルを作る方も基板に差す方も、実は位置合わせが大変なのです。さすがに、これ以上は厳しいですね!

DVX1315H

分かり易すい表現にするのは難しい?

1 V(ボルト)+1 V2 V (条件によりますが)になるのに、1 kHz1 kHz は何故2 kHzにならないのでしょうね?」との質問に対する簡単な答は……、何て言うことを思いながら、この記事に載せる内容を考えています。技術者として、当たり前と思っていることの方が、分かり易く表現するのは難しいです。

最終回にあたって

電子部品の中で、コイルは、高い(価格)、大きい(形状)、重いと嫌われ者ですが、それでも他の部品と異なった特長を持っており、重要な部品の一つになっています。

弊社は、今後も市場が要望するコイル製品を供給していきますので、商品に対する要望があれば遠慮無くお申し付け下さい。

さて、第2部、合計10回の掲載も、今回をもちまして無事終了することがでました。 この連載が、少しでもコイルを理解する手助けになれば幸いです。

サガミエレクのコイル

著者紹介

星野 康男
1954年生まれ。コイルが専門のレジェンド・エンジニア。
1976年に相模無線製作所(現在のサガミエレク株式会社)に入社。入社直後から技術部門に勤続。
技術部長・役員を歴任し、顧問として仕事の手助け・後輩の指導を続け2024年3月末に退職。わかりやすい技術説明には定評があった。
趣味はカメラ。好きな動物は猫(と鈴虫)。

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