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第8回 | 渦電流と磁気シールド | コイルを使う人のための話(第1部)

第8回 | 渦電流と磁気シールド

第8回目は「渦電流と磁気シールド」についてです。

磁気シールド

シールド(外部と遮蔽)を行うには、不必要な信号を「反射する」「吸収する」「迂回させる」方法があります。

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磁力線(磁界)を遮断する磁気シールドは、図-1のように磁性体(磁力線は磁性体の中の方が通り易い)で周囲を覆うことで、磁力線を迂回(磁性体に集中)させて遮蔽します。

シールドは、外部と遮蔽するだけでなく、内部から不要な信号が出るのを防ぐこともできます。

閉磁路インダクタには、外部を磁性材料で覆う構造にして、コイル内の磁束が外部に漏れないよう磁気シールドされているものがあります。

渦電流と影響

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金属を貫通している磁力線が変化(交流による磁界)すると、図-2のように元の磁力線の変化を打ち消す(図-2緑)ように金属の表面に渦電流が発生し、その大きさは周波数に比例します(周波数が低い=磁束の変化が少ないので電磁誘導が少ない)。

また、導電率が高いほど電流が流れ易いので、銅やアルミニウムなどの金属材料の場合は渦電流も大きくなります。

渦電流の値は周波数に比例するので、低い周波数では打ち消しの効果は期待できませんが、高周波では効果が期待できるようになります。

また、磁力線を打ち消す方向に渦電流が流れるので、コイルの近くに金属を配置すると、渦電流による磁力線の打ち消し効果によりインダクタンスの値が減少したり、損失が増加(=Qの低下)します。

閉磁路インダクタの場合は、コイルの外に漏れる磁力線が、もともと少ない構造なので影響を受けにくいのですが、開磁路インダクタの場合は磁力線がコイルの周囲に出ているので、より影響を受けます。インダクタをプリント配線板に配置する時、グランド・パターンや筐体の金属部分が近いと、渦電流が流れて影響を受けることがあります。

コイルに使う磁性材料

磁性体を使用することでインダクタンスを大きくすることができますが、磁性体の中を磁力線が通るので、磁性体に導電性(金属)がある場合は渦電流が発生します。 渦電流が流れると特性が低下するので、一般にコイルに使用する磁性材料は、フェライトのような渦電流が流れない絶縁特性の物を使用します。

磁性材料として金属を使用し直流重畳特性を改善したパワー・インダクタがありますが、この場合も金属を粉末にして絶縁処理を施して粉体間に渦電流が流れないようにし、渦電流による損失が発生しないようになっています(図-3)。

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電磁シールド

磁気シールドの場合は磁性体で覆うことでシールドを行いますが、渦電流を利用したシールドと言うのがあり、これは反射して遮断する方法になります。 周波数が低いと渦電流が流れ難い(=シールド効果が小さい)ので効果が期待できませんが、周波数が高くなると渦電流により磁力線が打ち消されることを利用して、磁界のシールド(電磁シールド)を行うことができます。一般に、10kHz程度の周波数以上から、金属を使用した電磁シールドの効果が期待できるようになります。

この場合、シールドに使用する材料は磁性体ではなく、電流の良く流れる金属材料(銅・銅合金やアルミニウム)が使用されます。なお、電磁シールドの場合は金属をグランドに接続することで、静電シールドとしての効果も期待できます。

電磁シールドの効果

開磁路インダクタの周囲を、厚さ0.1mmのリン青銅版で覆ったもので測定を行いました(写真-1)。コイル単体(赤線)、リン青銅板の端が接触しないようにした場合(青線)と、端をハンダで完全に接続(写真-1右)した場合(緑線)の特性をグラフ-1に示します。

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両者で、渦電流の流れ方が変わるので、特性の変化も異なりますが、特に低い周波数では渦電流自体が小さくなるので、影響(=シールドとしての効果)が少ないことが分かります。 電磁シールドの場合、接合部分を確実に導通させることが重要になります。

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高周波用コイルでは金属ケースを使用してシールドしますが、パワー・インダクタで金属ケースを使用しないのは、開磁路インダクタの場合はシールド効果に対して電気的特性の性能低下(インダクタンスの低下と損失の増加)が激しいこと、また閉磁路インダクタの場合は、コスト増の割にシールドの効果が少ないからです。

著者紹介

星野 康男
1954年生まれ。コイルが専門のレジェンド・エンジニア。
1976年に相模無線製作所(現在のサガミエレク株式会社)に入社。入社直後から技術部門に勤続。
技術部長・役員を歴任し、顧問として仕事の手助け・後輩の指導を続け2024年3月末に退職。わかりやすい技術説明には定評があった。
趣味はカメラ。好きな動物は猫(と鈴虫)。

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