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第11回 | コイル間の結合 | コイルを使う人のための話(第1部)

第11回 | コイル間の結合

第11回目は「コイル間の結合」についてです。複数のコイルを並べた時の結合は、どうなっているのでしょうか。

磁力線の向き

コイルから発生する磁力線の向きは、巻線の巻方向(右巻き、左巻き)とコイルに流れる電流(青矢印)の向きで決まります。

従って、図-1の(A)と(B)の場合では、巻方向と電流の向きが両方共に逆なので、磁力線の向きは同じになります。

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インダクタの極性表示

コイルを2個以上配置する場合はコイルから漏れ出る磁力線が互いに影響し合う場合があるので、製品によっては表面に写真-1のような極性表示があります。

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通常のコイルの場合、物理的な「巻始め」が存在しますが、巻方向に関しては生産方法の都合で、全ての形状で同じとは限りません。

トランスなど複数の巻線を持つコイル(通常は全て同じ巻方向になる)の結合の方向を示すのに使用(外部に漏れる 磁力線の方向は考慮されていない)されたものが、 インダクタにも使用された関係で現在のような物理的な「巻始め」の表示が一般的になっています。

本来は、電解コンデンサの極性のように、電気的特性に合わせて表示を行うべきなのでしょうが、 コイルの極性表示に関しては業界内で標準が存在しないため、コイル・メーカー間で100%互換性があるとは言えない状況にあります。 このため、コイルの仕様書には「巻始め」と合わせて「巻方向」が記載されている場合があります。

コイルを並べて置いた場合

コイル同士の結合を確認するために、インダクタを2個横に並べて(図-2参照)測定しました。

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図-3に示す測定回路でスペクトラム・アナライザのTGの出力を一方のインダクタ(L1)に加え、 もう一方のインダクタ(L2)の出力(=入力電力)を測定しました。 この時、インダクタ(L1,L2)が無い状態で、入力電力の値が0dBmになるようにTGの出力を設定してあります。

コイルが2個存在して互いに結合していると言うことは、トランスと同じことになります。 そのため、一方のコイルの電力の一部が他方のコイルに伝送されますが、トランスのように結合が強くはないので、 発生する電力は非常に小さくなります

グラフ-1は、弊社の開磁路SMDインダクタ(7A10N)と閉磁路SMDインダクタ(7E08N)のコイル間の結合を比較したグラフです。

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開磁路インダクタの場合でも、漏れ出た全ての磁力線が隣のコイルに入り込む訳ではないので、入力電力は減少(=結合が小さい)しています。 閉磁路インダクタの場合は磁気シールド効果により、開磁路インダクタと比較して、さらに約20dBほど減少しているのが分かります。

次に、閉磁路インダクタを外形寸法の約半分の4mmほど離して測定した場合は、さらに10dB(水色)ほど入力電力が減少することも確認できました。

複数のコイルを近接して配置する場合は、閉磁路インダクタが効果的であることが、お分かり頂けると思います。

*7A10N、7E08N 現在はラインナップしていない製品です。

2 in 1タイプ・コイルの場合

弊社のデジタル・オーディオアンプ用のコイルには、2 in 1タイプの製品が幾つかあります。これらの製品は、2個のコイルを1個にまとめることで、実装工数の半減と実装面積の縮小を実現しています。

2個のコイルを接近して並べることは、コイル間の結合が心配されますが、実際には個々のコイルのシールド効果が大きく、コイル間の結合は非常に小さな値になっています。

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グラフ-2は、弊社デジタルアンプ用2 in 1タイプのDBE1010Hを測定したものですが、通常の閉磁路コイルを並べた時よりもコイル間の結合が小さくなっています。

高周波の場合

高周波回路の場合は、インダクタンスが小さいので空芯コイルやチップインダクタが多用されています。この時、コイルを図-4のように互いに直角になるように配置することで、 コイルから出た磁力線は他方の巻線の輪の中を通りにくい方向になり、コイル相互の結合を最小にすることができます

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著者紹介

星野 康男
1954年生まれ。コイルが専門のレジェンド・エンジニア。
1976年に相模無線製作所(現在のサガミエレク株式会社)に入社。入社直後から技術部門に勤続。
技術部長・役員を歴任し、顧問として仕事の手助け・後輩の指導を続け2024年3月末に退職。わかりやすい技術説明には定評があった。
趣味はカメラ。好きな動物は猫(と鈴虫)。

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