searchサイト内検索 / 

第6回 | 高周波用のコイルのはなし | コイルを使う人のための話(第2部)

第6回 | 高周波用のコイルのはなし

高周波?

周波数が高い(数値が大きい)信号を一般に高周波信号と言いますが、ハッキリと「何kHz以上の周波数が高周波」とは決まっていないようです。現在だと、MHz以上だと高周波と言う感じを受けますが、関わっている機器(最近のワイヤレス機器だとGHzが当たり前の世界ですから)によって、感じ方の異なる人がいるでしょうね。高周波になると、例えば、電線の長さだとか、部品間の容量だとか、色々と考慮すべき事が多くなってきます。

高周波用です

電線の長さも問題になる

インダクタンスのリアクタンス値(影響の割合)は、「1MHzのときの1μH」と「1GHzのときの1nH」が同じ値になります。

電線の直径φ0.5mmで長さが10mmのときのインダクタンスは、概算で6.8nHだそうですから、周波数によってはリード線ではなく立派なインダクタとして機能(影響)します。

従って、計算で得られたインダクタンスを実際の回路で実現するには、プリント基板上の配線の長さも考慮して、使用するコイルのインダクタンスを決める必要があります。

同じように、電線(パターン)が2本並んでいる場合にできる容量分も、計算はしませんがコイルの自己共振周波数を低下させる原因になるので、同様に考慮する必要あります。

チップインダクタの出番

携帯電話やワイヤレス機器の高周波化が進んだおかげで、必要とするインダクタンス値も小さくて済むようになり、チップインダクタが大量に使用されるようになりました。

一方、周波数が高いと使用するインダクタンスはnHオーダーになりプリント基板上にパターンで形成することも可能ですが、Q特性と大きさの問題から、チップインダクタの出番になりました。

写真-1は、2520サイズ1005サイズのチップインダクタを並べて撮影したものですが、こうして見ると小さいと思われた1005サイズですが、最近では大きい部類になってしまいました。

現在は、1005サイズ以下の巻線タイプのインダクタも世の中にはありますが、さすがに巻線タイプの特長(=Qが高い)が生かし切れなくなり、積層タイプの方が幅を効かせているようです。

大きさの比較

f-Q特性

写真-21608サイズのチップインダクタC1608CBですが、33nHのときのインダクタンスとQの周波数特性をグラフ-1に示します。

グラフを見ると、インダクタンス値は1GHz程度までほとんど一定ですが、Q値は周波数と共に増加し1GHz付近で最大値になった後、急激に低下するのが分かります。

一般のインダクタの周波数特性は、高周波用に関係無く概ねグラフ-1のような特性曲線になり、またインダクタンスが大きくなると特性曲線の位置は左に移動してきます。

C1608CB

実際に使用する周波数が、周波数特性のグラフで、どの辺の位置に有るのか、事前に確認することも重要です。

C1608CB-33Nの周波数特性

インダクタをできる限りQを高い状態で使用したい場合は、使用周波数でQ値が一番高くなるインダクタンスを選定(残念ながら、インダクタンスを自由に選べませんが)して、そのインダクタンスが回路で使用可能か検討するのも一つの方法になります。

High-Qコイル

高周波では直流抵抗はほとんど意味を持たないので、その代わりにQを用いてコイルの損失の度合いを表しています。 一般に、コイルのQが低いと信号がロスして感度低下が発生したり、VCOなどの発信器の場合はC/N(搬送波対雑音比)が低下して信号の純度が低下します。

チューナーのフロントエンドに使用されているインダクタは、受信感度を優先する場合はQの高い空芯コイルや巻線タイプのチップインダクタが良く採用されています。

損失が小さいからHigh-Qなのですが、高周波では表皮効果の影響で電線の表面にしか電流が流れません。従って、実際に流すことができる高周波電流は、直流のときに比較して非常に小さな値になります。 直流電流の規格だけで判断してコイルを選定すると、高周波のパワー回路では最悪コイルが燃えてしまうこともあります。

金属でシールド

高周波では、金属板で仕切ることで磁気シールドも含めたシールドを行うことができますが、低周波の場合は磁性材料を使用して、コイルの周囲を覆う必要があります。これは、コイルから出た磁力線が金属を貫通するときに発生する渦電流に関係しています。

高周波になるほど、表皮効果により金属の表面にしか電流が流れませんから、シールド板も薄くて済むことになります(金属メッキでも十分に効果が期待できます)。

磁気シールドと言う意味では、金属板を接地する必要はないのですが、接地しないと金属板自体が他の部分と容量結合してノイズを拾ってしまうことがあるので、金属板をプリント基板のグランドに接地しておけば静電シールドも同時に行うことができます。

それ以外にも、機械的な強度が上がりますので、写真-3のような金属ケース付きのコイルの場合は、必ず金属端子を接地してお使い下さい。間違いなく、トラブル発生の要因を減らすことができます。

SMD可変コイル

周囲の影響

高周波用のコイルでは、Q値を高くするために開磁路タイプの製品が多くあります。従って、コイルの周囲に磁性体が有ればインダクタンスが増加し、金属(電解コンデンサのアルミ外装)が有るとインダクタンスが減少し、またQが低下することがあります。

コイルの周囲に金属板を配置する場合は、コイルからでる磁力線が金属板を貫通しない方向にすると、影響を小さくすることができます。

測定の難しさ(nHのコイルの場合)

インダクタンスを測定する場合は、残留インダクタンスや浮遊容量の影響を取り除いて行わなければならないので、小さい部品を測定する割には装置が大きくなります。まして、温度特性などの室温以外の条件で測定するとなると、非常に大変な作業になります。

参考までに、写真-4にチップインダクタの測定に使用しているユニット(市販の測定器のユニットです)を掲載します。なお、測定そのものは測定器が測定結果に対して補正まで行ってくれるので、難しいと言うことはありません。

測定ユニットの例

著者紹介

星野 康男
1954年生まれ。コイルが専門のレジェンド・エンジニア。
1976年に相模無線製作所(現在のサガミエレク株式会社)に入社。入社直後から技術部門に勤続。
技術部長・役員を歴任し、顧問として仕事の手助け・後輩の指導を続け2024年3月末に退職。わかりやすい技術説明には定評があった。
趣味はカメラ。好きな動物は猫(と鈴虫)。

注意事項
  • 本文中に掲載の製品の一部には、既に生産が終了しているものが含まれている場合がございます。
  • 記事作成から時間が経過しているので、記載の情報が古いままの内容が含まれている場合がございます。

※掲載内容に付いて、お気付きの点がありましたら、こちらからお願いします。