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第3回 | 巻線のはなし | コイルを使う人のための話(第2部)

第3回 | 巻線のはなし

軸回しとフライヤー方式

トロイダル・コイルやバルン・トランスのような、穴に電線を通過させて巻線するコイルを除けば、コイルの巻線方法は大きく分けて次の2種類(図-1参照)になります。

  1. 軸回し方式:  巻線されるボビンやフェライトコアなど本体を回転させて、電線を巻きとりながら巻線を行います。
  2. フライヤー方式:本体は固定したままで、電線の方を回転させて本体に巻き付けながら巻線を行います。

それぞれの方法は、巻線する上で利点と欠点があり、製品の構造、電線の太さ、巻数などにより使い分けされています。

また、巻線と同時に自動で電線を端子に直接絡げる処理を行う場合も、両方の巻線方法で可能になります。弊社のチップインダクタなどは、フライヤー方式で巻線が行われており、 デジタル・アンプ用インダクタの7Gシリーズなどのパワー・インダクタ類は、軸回し方式で巻線されています。

軸回し方式とフライヤー方式

コイルをバラツキの少ない特性にさせるためには、安定した巻線を行うことが重要で、実際の巻線工程では「電線の張り(電線を一定の力で引っ張っている)」や「送り(巻線を整列させるために、電線を横方向に移動させていく)」の制御を行っています。

巻始めの電線の問題

一般に巻線の巻始めはコイルの内部から引き出してくる必要があるので、超薄型のコイルの場合、その分のスペースが大きな割合になります。図-2のように、巻溝が電線2本分しかない場合で考えると、巻始めの電線の引き出しのための通り道が必要になるので、実際には巻線は1層しか行えません。

また、巻溝の大きさは電線8本分の面積がありますが、実際には約半分の「1層分+巻始めの1本」の5本しか巻線することがでません。

超薄型のコイルを作る場合、従来の巻線方法では限界があるので、この無駄部分を利用できるようにする何らかの対応が必要になります。

通常巻線の場合の断面

巻始めと巻終りの区別の無いα巻線

そこで、この問題を解決するために考え出されたのが、通称「α巻線」と言われる巻線方法です。巻始めと巻終りを外側に向かって同時に巻線することで、電線の端末が内部に取り残されないようになります。

この結果、前項の電線の巻始めの通り道が不要になります。実際に「α巻線」を行うには、それなりの工夫をした巻線機が必要ですが、通常の巻線方法で使えなかった引き出し部分を利用できるようになり、超薄型コイルを実現するのに効果があります。

なお、巻線の状態を上から見るとギリシャ文字の「α」の形に似ているので、こう呼ばれているようです。

α巻線

平角線と丸線での巻方の違い

通常のコイルは、断面の形状が円形の電線が使用されていますが、弊社のデジタル・オーディオ用コイルの一部に使用されている電線に、平角線と呼ばれる電線があります。

平角線は、普通の電線と異なり断面の形状が図-4のように長方形をしていて、電線は帯状の平板になります。平角線を使用したコイルは、この電線を図-4(B)の方向に曲げて巻線しますが、普通の方法で曲げると写真-1のように歪んでしまって写真-2のように綺麗に巻線することができません。

断面が丸の場合は、どの方向にも曲げることができるので問題有りませんが、断面が四角形になっただけで、曲がり方に方向性がでてきますので、丸線のように簡単に巻線することができなくなります。

平角線
手で曲げた電線
平角線のコイル

では、どのように巻線しているかと言うと、詳しくはお教えできませんが、巻線のときに電線が写真-1のように倒れて歪まないように固定しながら軸回し方式で巻線を行っています。

平角線は、巻線は難しいのですが丸線と比較して高密度(電線間の隙間が無くなる)に巻線できるので、小形で低抵抗(低損失)の高性能なコイルを作る上で最適な電線です。

著者紹介

星野 康男
1954年生まれ。コイルが専門のレジェンド・エンジニア。
1976年に相模無線製作所(現在のサガミエレク株式会社)に入社。入社直後から技術部門に勤続。
技術部長・役員を歴任し、顧問として仕事の手助け・後輩の指導を続け2024年3月末に退職。わかりやすい技術説明には定評があった。
趣味はカメラ。好きな動物は猫(と鈴虫)。

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