SEPIC回路の動作原理とインダクタ選定 | コイルを使う人のためのお助け雑学
目次
電源回路
電子機器で消費されるエネルギーは、電源回路から供給されます。
電源回路は、商用交流電源や電池などから入力した電気エネルギーをそれぞれの電子機器が要求する電気エネルギーに変換して供給します。
 
      電源回路の分類
 
      スイッチング電源
スイッチング電源とは、スイッチング素子を用いて電力変換・調整を行っている電源装置の一つです。
利点
- 小型
- 軽量
- 高効率
欠点
- 部品点数が多い
- ノイズが大きい
 
      スイッチング電源の分類
コンバータの中でよく使われる。スイッチング電源の分類は下記のようになります。
 
      非絶縁型の回路形態と特徴
ZETA回路は反転SEPIC回路とも言われてます。SEPIC回路と同じ昇降圧型で、回路構成が類似してます。使用用途は同じです。
| 種類 | 回路例 | 入力電流リプル | 出力電流リプル | 出力 | コイル数 | 特徴 | 
|---|---|---|---|---|---|---|
| 昇降圧 |  | 大 | 大 | 反転 | 1 | 入出力電流のリプルが大きい出力が反転する | 
| SEPIC |  | 小 | 大 | - | 2 | 入力電流のリプルが小さい | 
| ZETA |  | 大 | 小 | - | 2 | 出力電流のリプルが小さい | 
| CUK |  | 小 | 小 | 反転 | 2 | 入出力電流のリプルが小さいが出力が反転する | 
SEPIC
  Single Ended Primary Inductor Converter の略
  
  SEPICとはインダクタを2個使う昇降圧コンバータの一種
参考)昇降圧コンバータの使用例
 
       
      3.3Vの電圧を安定して得るケース
      回路構成自体は40年以上前からあった。ただし設計難易度が高く採用されてなかった。
      
      (昔はトランスを使っていた)
      
      ⇒最近ではIC技術の進歩で専用ICが出てきたことで、使われるようになってきてます。
    
 
      SEPICの特徴
メリット
- 一つの回路で昇圧と降圧の動作ができる
- 出力電圧と入力電圧の極性が同じ
デメリット
- 大電流用途には向かない
- インダクタを2個使う
回路の動作原理・イメージ
 
      例)Vin=12[V]でD=0.4のとき、Vout=8 [V] D=0.6のとき、Vout=18 [V]
 
      デューティ比Dは、1周期におけるONの割合のこと。
 
      D=0.5を境にして、昇圧か降圧かが決まります
回路の使用用途
入力電圧が変動しやすい、電源電圧と出力電圧が近い場合に使用されます。
①車載用機器での使用
自動車の用途でLEDを光源とした場合、自動車特有の電圧変動が大きく、昇圧型、降圧型では、LEDのちらつきなどが発生して設計が難しい。
昇降圧型の方が設計が容易の為、LEDを使った下記のものに使われております。
 
      ②モバイル機器での使用
単一のリチウムイオン電池は通常、4.2Vから3Vに放電されます。例えばユニットが3.3Vを必要とする場合にSEPICは効果的です。
 
      SEPIC回路のインダクタの選定
L値
L値が大きいとリプル成分(※1)が抑制されます。また効率も良くなります。ただし負荷応答特性(※2)が大きくなります。
  ※1: リプル成分とは平滑回路で一定に出来ない微小な変動成分。理想的にはゼロであることが望ましい。
  
  ※2: 負荷応答特性とは急激な電流変動に対する出力の電圧変動特性。
DCR,定格電流
  DCRが小さければ発熱による損失が小さくなるため、効率も良くなります。
  
  定格電流は、流す電流以上のものを選定します。
使用するインダクタの選定
SEPIC回路にはインダクタが2個必要ですが、回路動作上問題ない為、同じコアに電線を2本巻いた結合インダクタ(SQR/SGQRなど)を使用できます。
それにより実装面積を大幅に減少させることができます。
サガミのSEPIC回路用インダクタ(SQR/SGQR)の特徴
- 2in1構造のため実装タクト、接地面積を低減
- 型・高効率のSEPICやZETAコンバータなどに対応
- 閉磁路構造
- 4端子構造により耐振動性、耐衝撃性が向上
- 
  サガミのSEPIC用インダクタは、下記8~12mm角サイズが有ります。
  
- 通常品 SQR8065C/1065C/1277C
- 低背品 SQR8042C/1042C/1257C/1242C
- 配線変更品 SQR8065CA/8042CA/1065CA/1277CA
- 廉価品 SGQR8065CA/1065CA/1277CA
 
         
         
        効率比較
SEPICの評価基板を用いて下記インダクタのサイズや種類を変更し、効率を測定しました。
| サイズ[mm] (D×W×H) | コアの材質 | 種類 | 数量 | |
|---|---|---|---|---|
| ① | 12 × 12 × 8 | フェライト | 結合インダクタ(2in1) | 1 | 
| ② | 11.5 × 10 × 9 | メタル | 結合インダクタ(2in1) | 1 | 
| ③ | 12 ×12 × 4.5 | フェライト | パワーインダクタ | 2 | 
| ④ | 7.5 × 7.2 × 5.4 | メタル | パワーインダクタ | 2 | 
 
      
  フェライトの方が効率が良い結果となった。
  
  ※効率の値はICによって変わります。
※メタルはフェライトに比べ、小電流でもL値が下がりやすいためと考えられる。
 
      結合インダクタ(2in1)と2個使いの効率は同等程度となった
まとめ
- SEPICは電源回路の一種で、昇圧も降圧もでき、インダクタを2個使う。
- SEPICは電圧変動しやすい車載電源や携帯機器のバッテリー等や電源電圧と出力電圧が近い場合に使われる。
- SEPICで使用されるインダクタ2個は、
    
 結合インダクタにすることで実装面積などメリットがある。
- SEPICではメタルよりフェライト、サイズは大きい方が効率は良い。
    
 2in1とシングル2個使いで差は無い。※弊社比較
よくある質問
Q. SQR1277CはDCRなども違う為、L値も変わってくるのでしょうか?
A. 巻数が同じのため、L値は同じになります。
    
     ※CAタイプは配線方法を変えているので0.5T分差がありL値が少しだけズレます。
  
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