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デジタルアンプ用インダクタの話 | 第1回(前編)

デジタルアンプ用インダクタの話とは

今回は、主流になったデジタルアンプ用のインダクタの話を2回に分けて掲載することになりました。



はじめに

前編はインダクタを構成している材料に関連した話です。

インダクタの基本構造

弊社のデジタルアンプ用インダクタの一つを例にとって、無理矢理製品を割って中身をお見せすると、写真-1のような構造になっています(台座は外してあります)。
コイルの周りを覆っている灰色に見えるのがフェライト・コアと呼ばれる磁性体で、茶色に見える銅線を巻線したコイルが磁性体の中に入っている構造になっています。

インダクタの中身

この基本構造自体は、写真-2の通信機器で使用されているEPコアを使用したトランスと同じですが、弊社ではコアの形状に改良を加え、その他の見直しを行いデジタルアンプ用インダクタに最適化した製品の開発・設計を行っています。
コイルの周りを覆っている灰色に見えるのがフェライト・コアと呼ばれる磁性体で、茶色に見える銅線を巻線したコイルが磁性体の中に入っている構造になっています。

トランス

インダクタの特長

インダクタの基本構造からも分かるように、トランスで使用していた巻枠用の樹脂ボビン(写真-2で端子が出ている黒いもの)を排除することで、その分巻線出来るエリアを広げることが可能になり、低い直流抵抗を実現することができるようになりました。

また、磁性体が巻線を覆う形の構造のため、インダクタからでる漏れ磁束を小さくすると同時に、外部からの影響も少なくすることができました(磁力線は、磁気抵抗の少ない磁性体の中を通り抜けます)。

平角線(次頁参照)を使用したインダクタでは、巻線可能な空間を最大限に利用することができるので、より直流抵抗の小さなインダクタを実現しています。

インダクタの材料構成

インダクタの主要な材料構成は、次のようになります(写真-3写真-1参照)。

  1. 磁性体: フェライト・コア
  2. 巻線: 樹脂の皮膜付き銅線
  3. 台座: 熱硬化性樹脂(インダクタの底部)
  4. 製品固定: 加熱硬化型接着剤
7G14C 底面写真

インダクタを構成する材料は少ないのですが、これらの材料の特性を上手く利用することで、より高性能なインダクタを開発しています。

この中の①②④の材料について、順次説明を行っていくことにします。

フェライト・コアについて

巻線したコイル(空芯コイル)にフェライト・コアを使用することで、使用しない場合に比較してインダクタンスの大きなインダクタを作ることが可能になります(図-1の②参照)。

一方、大きさを変えないでインダクタンスの値が同じままで良ければ、少ない巻数でより太い電線を使用して巻線することができます(図-1の①参照)。

フェライト・コアの有無とインダクタンスの関係

フェライト・コアには、大きく分けてMn-Zn系(マンガン系)とNi-Zn系(ニッケル系)の2種類ありますが、初透磁率(μi)、飽和磁束密度(B)と損失特性を考慮して、比較的低い周波数で使用されるデジタルアンプ用インダクタの場合は、Mn-Zn系のフェライト・コアが使用されることが多いのです。

フェライト・コアは、材質の他に形状がありますが、サガミエレクでは巻線したコイルとの相性(インダクタの作り易さ)と電気的特性を考慮した結果、EP形状のコアを改良して使用しています。

これにより、優れた特性のデジタルアンプ用インダクタを実現することができましたが、特性の詳細については、次回お話しすることにします。

電線(銅線) について

巻線している電線は、銅線の表面に樹脂をコーティングしたもの(俗に言うエナメル線です)を使用しています。

電線は、一般には断面の形状が円形のもの(丸線)が使用されますが、弊社のデジタルアンプ用インダクタでは断面形状が四角形のもの(平角線)も使用されています。

丸線と平角線では、巻線をした場合の巻枠部分の利用率が異なり、当然断面形状が四角形の方が有利になります。

この差は、直流抵抗に直接影響しますが、それ以外にも表皮効果や近接効果の影響で、高周波域での特性に差が出てきます。

また、形状の違いから電線の生産性が異なるために価格が異なるほか、巻線の方法(=コイルの生産性)も異なってきます(表-1参照)。

丸線(標準) 平角線
価格 安価 高価
巻線作業 容易 難易
直流抵抗 普通 小さい
音質
形状 丸線 平角線

母材の材質は「タフピッチ銅」と呼ばれている銅(一般に純度99.9%以上)で、微量の酸素(Oxygen)が含まれていますが、この酸素を取り除いた無酸素銅線(OFC;Oxygen Free Copper)と言うものもあります。

更に、銅結晶を大きく成長させた線形結晶無酸素銅(LCOFC;Linear Crystal Oxygen Free Copper)と言うのもあり、一部の超高級オーディオ機器やケーブル類に採用されているようですが、一般のオーディオ機器で使用されているのは無酸素銅線(OFC)までかと思われます

弊社のデジタルアンプ用インダクタの一部にも、無酸素銅線(OFC)を使用したものがあり、特に音質を重視するオーディオ機器用に採用されています。

接着剤について

接着剤は、大きく分けて2種類を使用していて、硬化後が比較的固くなるタイプと、比較的柔らかい物を使用しています。

シッカリ固定することを目的とした場合は、一般的に使用する接着剤は硬化した後に硬くなる傾向にありますが、それでも硬さにも違いのある物がたくさんあります。

コイルを保持する目的で使用する場合は、音質との兼ね合いで比較的柔らかい物を使用することもあります。

また、生産性との兼ね合いから1液タイプの熱硬化型の接着剤を使用していますが、製品の強度(性能)だけでなく音質との兼ね合いから、接着剤一つをとっても簡単には決めることができないのです。

他にもノウハウがあるのですが企業秘密と言うことで、より詳しい話をお聞きになりたい方は弊社の営業担当に直接依頼をして頂ければ、技術担当に依頼してくれると思います。

終わりに

弊社では、デジタルアンプ用インダクタを小出力用(DBE7210H)から大出力用(7G31A)まで、ピンタイプとSMDタイプを数多く取り揃えてありますので、ご希望のインダクタを必ず見つけることができると思っています。

また、製品のカスタマイズにも対応しておりますので、お気軽に声を掛けて頂ければと思います。

なお、次回の後編では「デジタルアンプ用インダクタの特性に関する話」を予定していますので、お付き合いのほど宜しくお願い致します。

7G31A
またよろしくね
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