このコラムは、7Gシリーズがモデルのマスコット コイルちゃん が聞き手となり、開発部の ネオさん にお話を伺うインタビュー形式でお届けします。
はじめに
DCDC電源用インダクタは、カタログの数値やコストだけでなく、実機評価での「発熱」や「効率」が選定の決め手になることが増えています。一方で、評価結果は設計・評価・購買など複数の立場をまたいで共有されることが多く、必要な情報が揃わないまま議論が止まってしまう場面もあります。今日は開発者の視点から、"インダクタを使う人"が発熱・効率の相談をスムーズに前へ進めるための確認ポイントを伺います。
はい。DCDC電源用途ではコストは重要です。ただ、実際の相談としては発熱や効率についての話が多い印象です。
相談が来たら、まずは「この3点」
発熱・効率の相談が来たとき、最初に何を揃えると話が前に進みますか?
一番最初に聞くのは 「Idc / Iac / 動作周波数」 です。
- Idc(Adc):直流電流(平均成分)
- Iac(Arms):交流電流(リップル成分)
- 動作周波数:スイッチング周波数
この3点がわかると、サガミの測定基板上での発熱値を簡易的に予測できるようになります。
それが分かると、次はどんな見立てができるんでしょう?
Rdc / Rac の見方で、直流損失と交流損失のどちらを減らすと効果的かが見えます。ただしサガミ側からは、半導体など別の素子や基板配線の影響(DCR/ACRなど)が見えない部分もあります。なので、こちらはコイルの損失データを提供しつつ、顧客側が「どこをどうしたいか(何を下げたいか)」をヒアリングして前に進める形になります。最近はSPICEデータも充実してきたので、顧客設計者がシミュレーション上でAC/DCどちらの損失が支配的か確認できるケースも増えてきました。
「DCRが低い=熱くならない」ではない理由(車のたとえ)
営業・購買だと「DCRが低いほど良い」と考えがちです。なぜそれだけでは足りないんでしょう?
車で例えると分かりやすいです。平坦な道を一定の速度で走っている時、燃費は良いですよね。一方で急速な加速や減速を繰り返すと燃費は悪くなります。
燃費の悪さ=損失(発熱)の多さ
DCRは転がり抵抗のようなもの。低いほど一定速度では抵抗が少なく走れます。でも、加減速を繰り返して燃費が悪くなるのは別の原因で、それが ACR(交流損失) です。
つまり「どれくらい急激に加減速しているか」「どれくらいの頻度で加減速しているか」を確認するのが、ACRがどれくらい効く環境かを確認すること。そのためのパラメータが 「Idc / Iac / 動作周波数」 なんです。
次に確認したいのは「評価に使ったインダクタのメーカー・品番」
3点がわかった次は、何を確認すると会話が一段進みますか?
相談者は実験などをして「発熱が大きい」「効率が悪い」という状況のはずです。そこで、次に確認したいのは その評価で使ったインダクタのメーカーと品番です。それが分かると、サイズ、構造、想定される材料などから、特性の傾向がつかめます。似ているように見える製品でも、使ってみると差が出ることがあるので、まず"何を使ってどうなったか"を押さえるのが近道です。
相談を前に進めるための「確認ポイント」
ここまでの話を踏まえると、発熱・効率の相談を前に進めるには、何を揃えるのがポイントでしょう?
まずは 「Idc / Iac / 動作周波数」。これは、交流損(ACR)が効く条件かどうかを含めて、発熱の当たりを付けるために重要です。そのうえで、評価で使った インダクタのメーカー・品番 が分かると、サイズや構造、想定される材料から特性の傾向がつかめます。
そしてもう一つ大事なのが、「どこまでなら犠牲(トレードオフ)にできるか」の共有です。特性を全部良くして万歳、とはなかなかいきません。たとえば、発熱や効率を改善したいときでも、
- サイズはどこまで許容できるか
- コストはどこまで上げられるか
- DCRはどこまで増えてもよいか(増やせないか)
といった"譲れる条件/譲れない条件"が分かると、現実的な提案の範囲が決まります。逆に、その条件次第では「それは難しい(成立しにくい)」と早めに判断できることもあります。
おわりに
カタログ上の数値が立派でも、実際に使ってみると「思ったより熱い」「効率が伸びない」という製品は現場では珍しくありません。見た目は良くても中身が伴わない——そんな選定にならないよう、DCRだけでなく、Idc/Iac/周波数といった"実際の運転条件"で損失を見に行くことが大切です。サガミエレクは「似ているようで、使うと違う」を目指して改善を積み重ねています。発熱や効率でお困りごとがあれば、ぜひ気軽にご相談ください。
