EMIノイズ対策のよもやま話(80MHz/1GHz) | コイルを作っている人の話 | サガミエレク株式会社
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EMIノイズ対策のよもやま話(80MHz/1GHz) | コイルを作っている人の話

このコラムは、7Gシリーズがモデルのマスコット コイルちゃん が聞き手となり、開発部の ネオさん にお話を伺うインタビュー形式でお届けします。

はじめに

コイルちゃん(記者)

EMI試験でNGが出ると、一気にスケジュールが厳しくなります。そのような状況の中のお客様の相談では、特に 80MHz付近や 1GHz付近のノイズでお困りのケースが多いそうですね。そこで今回はEMIノイズ対策についてお聞きしたいと思います。

注:本稿の例(80MHz付近など)や「電圧法/電流法」の話は、車載機器のEMC評価(例:CISPR 25)の測定レンジや運用を主に念頭に置いています。規格やセットアップ(伝導/放射、治具、配線条件)によって、観測される周波数帯や有効な打ち手の優先順位が変わることがあります。

まず前提:周波数が変わると、主役も対策も変わる

ネオさん

数MHz付近まではディファレンシャルモード(DM)のノイズが多く、チョークコイルやXコン(Cx)で対策される方が多いですし、それで一定の効果が得られることが多いです。

ただ、80MHz付近になるとコモンモード(CM)ノイズが支配的になりやすくなり、チョークコイルやCxでは効果が表れにくくなります。そこでコモンモードコイルを使用する必要が出てきます。

またこの帯域は放射ノイズも顕著になり、放射を下げたら伝導が増えるなど、対策の副作用が出やすいのも特徴です。ノイズを「反射」させるのではなく「減衰」させる必要が高くなってきます。

さらに1GHz付近になると放射が支配的になりやすくなり、GHz帯まで効果が出るフェライトビーズが有効な場合もありますが、回路的なフィルタだけでは一定以上の効果が得られない場合が増えてきます。ノイズ源へのシールド、回路の引き回しを工夫してノイズの伝搬を防ぐといった事も必要です。

相談を受けたら最初に聞くこと(80MHzでも1GHzでも共通)

コイルちゃん

お客様から「80MHz付近がNG」「1GHz付近がNG」と言われたとき、最初に何を確認しますか?

ネオさん
  1. 伝導か放射か。伝導なら 電圧法か電流法か をまず聞きます。
  2. 可能であれば簡易的でも良いので、ざっくりした回路を聞きます。
  3. ノイズ源と、今取られているノイズ対策を聞きます。
  4. もし解析が進んでいるなら、DMかCMのどちらが支配的かも聞きます。

伝導ノイズ:電圧法と電流法は「見ているもの」が違う

コイルちゃん

電圧法と電流法って、同じ伝導ノイズでも傾向が違うと聞きます。まず前提から教えてください。

ネオさん

電圧法と電流法は、それぞれ ノイズ電圧ノイズ電流を測定する方法です。もちろん違う値が出てきますし、傾向も違います。だから対策も変わってきます。

電圧法:電源に“現れたノイズ電圧”を見る(端子ごと:点)

電圧法は、測定対象の電源に現れるノイズ電圧を見ます。ノイズ源からノイズが発生し、回路を伝搬し、電源ケーブルを伝って電源までやってきたノイズが、測定データになって現れます。そして、+端子と−端子それぞれが独立したデータになります。

ですから、対策はたとえば +端子のノイズが高ければ+側の回路フィルタを強化すれば良い、という考え方になります。

電流法:電源線に“流れ出るノイズ電流”を見る(ぐるっと一周:ループ)

電流法は、測定対象の電源線に現れる電流ノイズを見ます。ノイズ源からノイズが発生し、回路を伝搬し…というところは同じですが、電源ケーブルを伝って 測定対象から出た直後の場所で測定されます。

電源ケーブルは +と−をひとまとめにして測定すると コモンモード電流ノイズを測定するイメージになります。(※電流プローブ測定は、クランプ方法によりCM/DMどちらの電流も評価できます。)

流れ出た電流ノイズは途中で枝分かれすることもありますが、回路をぐるっと一周回って、同じところに同じ量が戻ってきます。つまり測定対象から出て測定地点を超えて、どこかを伝って、どこからか戻ってきます。

だから、対策としてはこの ノイズの“ぐるっと一周(ループ)”を断ち切らないといけないんです。

まずはコンデンサで“片を付けたくなる”——でも、それで終わらない帯域がある

コイルちゃん

一般的には、まずコンデンサで解決しようとすることが多い気がします。

ネオさん

コンデンサはコスト的に優位なので、ある程度めどが付きそうならコンデンサで解決しようとしますよね。例えば容量を大きなものに変える、容量の大小を組み合わせる、種類を(性能の良いものに)変えるなどです。

それでダメならCRスナバで、チョークコイルは高いのでLCの2次以上のフィルタを組むのは最後の手段にされがちなイメージがあります。

ただ、それで問題が解決しているならこのコラムを読む必要もないのかなと思います(笑)。

電圧法の落とし穴:80MHz付近からDMノイズ対策だけでは足りないことがある

注:ここで述べる「DMだと思っていたらCMだった」という現象は、回路構成・寄生容量・ケーブル長・筐体/基準面などで現れ方が変わります。本稿は“よくある傾向”として読んでください。

コイルちゃん

80MHzでお困りごとが多いのはどのような原因があるのでしょうか?

ネオさん

電圧法で測定されるノイズはDMノイズ対策と思われがちですが、特に +/−と中点電位にGNDがある場合など、数十MHz付近から位相がずれて、実はCMノイズが支配的になっていたりする場合があります。

そのような場合、チョークコイルとCxの組み合わせでは十分な効果が得られず、コモンモードコイルとCyを用いて対策する必要があります。

電流法の攻略:大ループを切れないなら“近場に小ループ”を作る

コイルちゃん

電流法は「ループを断ち切る」と言われても、実際には簡単じゃないですよね。

ネオさん

測定物から出たノイズが電源線や測定点を通過して、グラウンドプレーンを通って測定物に戻る——このループを切ることは容易ではありません。

そこで考え方としては、測定点を通る大きなループより小さなノイズループを、ノイズ発生源付近に形成することが必要になります。

ノイズ発生個所を見つけたら、ノイズの伝搬ループ面積を最小にするように、ノイズの伝搬路を構成する必要があります。

  • ノイズループの伝搬路には、インピーダンスの低いコンデンサなどを用いてループを閉じる
  • ループから外れる枝に対しては、インダクタなどでノイズがループ外に出てしまうことを防ぐ

また、ループ面積を最小にすることで、ノイズループから空間に放射されるノイズも減らすことができます。

空間に放射されたノイズは放射ノイズとして測定されるだけではなく、一部は別の回路で再び伝導ノイズに戻ってくる場合があります。経路のわからないノイズが抑えられないお悩みを抱える方は、このケースも考えられるのです。

「GNDに太くつなげば安心」は時に逆効果

コイルちゃん

設計として基本的には「GNDに太くつなげばノイズが逃げる」という話もよく聞きます。

ネオさん

実際、基本的にGNDに太く短くつなぐことで多くの場合は良い結果が得られると思います。

ただしそうじゃない場合もあるのが悩みどころなんですよね。

ノイズ源からノイズを減衰させずにGNDに逃がしてやるとします。GNDが理想の0電位であれば、電圧法のノイズ対策はできている、という見方もできます。しかし実際には、ノイズは減衰していません

イメージとしては、湾から出た波が海に出て広がって浅い波になったように見えても、別の狭い湾で再び大きな波になりえる——そんな状況です。つまり、GNDを通じてノイズが別の場所へ伝搬してしまう可能性があります。

だからこそ、「海に出る前に波を減衰させる」「海につながる部分に波消しブロックを置く」という発想が重要になります。

反射ではなく“減衰”のためのスナバ:CRだけでなくCLも

コイルちゃん

具体的には、どう減衰させるのでしょう?

ネオさん

代表例が CRスナバです。ノイズの減衰に効果がありますが、Rを大きくするとCの効果も薄れるというデメリットがあります。

そこで一つの手段として考えられるのが CLスナバです。Rの代わりにフェライトビーズなどを用いることで、

  • 低い周波数ではLは素通りして、Cが効く
  • 高い周波数ではLが“損失が支配的な大きなインピーダンス”を発揮して、ノイズを減衰させる

という狙いです。

例えば数MHzのDMノイズが支配的な部分ではCがノイズをGNDによく伝え、数十MHz~数百MHzの領域ではLが損失を伴ったインピーダンスを発揮して高周波ノイズの逆流を減衰させるといった使い方です。

このような狙いでノイズ対策を行う場合のLはフェライトビーズが適していると思います。

時にGNDはノイズを効率よく伝搬させる“回路の一部”になりうる、という所がポイントです。

1GHz帯:フィルタで頭打ちなら「出さない/伝搬させない」へ

コイルちゃん

1GHz付近で、回路的なノイズフィルタでの対策が頭打ちになるときはどうしたらよいですか?

ネオさん

1GHz付近で50〜100Ωのインピーダンスを持つノイズフィルタでも十分な効果が得られない場合は、フィルタ以外の方法に頼らざるを得ない場合があります。

苦労して設計した回路が後にEMI試験で問題を起こさないように、コストバランスを見ながら、ノイズ源の扱い(配置や遮蔽)や引き回しを含めて総合的な考えで物理的にノイズが発生・伝搬しにくいデザインを最初から心がけておくことが重要です。

おわりに

ネオさん

EMIは「この部品を入れれば終わり」という単純な話になりにくく、周波数帯が上がるほど、モード(DM/CM)や放射・伝導のバランスが変わります。

困ったときは、まず「伝導か放射か」「電圧法か電流法か」「回路の概要」「ノイズ源と現状対策」「DM/CMどちらが支配的か」を揃えるだけでも相談はしやすくなると思います。

とはいえ、EMIは本当に難しく、相談を受けても「これで解決です!」と一発で言い切れるケースばかりではありません。だからこそサガミエレクとしては、お客様と一緒に悩み、学びながら解決に向けて関わっていけたら嬉しいと思っています。

インダクタメーカーとして、コモンモードコイルやチョークコイル、フェライトビーズなど、ノイズ対策に使える部品サンプルはBOXでのご提供も可能です。お困りごとがあれば、ぜひ気軽にご相談ください。

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著者情報

開発部

開発部は、インダクタの設計・試作・評価から量産立ち上げまでを担うチームです。
お客様の要求仕様に対して、性能・サイズ・コスト・信頼性などの条件を整理し、最適な製品づくりを進めています。

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