ファンタム給電（ファントム給電）の使用に適したインダクタの紹介 | ファンタム給電について

概要

近年、特に車載市場でのワイヤハーネス軽量化の流れがあり、弊社へもファンタム給電用途での引合が増えてきました。
ファンタム給電（Phantom Power）は、信号伝送線を通じて電力を供給する方法でオーディオ機器や通信機器でよく使用されています。
専用の電源ケーブルを使っていないのに電力を送れる、または微量な電流であることから幽霊を意味するファンタム、あるいはファントムと呼ばれています。
ファンタム給電を使うことで別途電源の接続が不要となり、配線が簡単になるメリットがあります。

仕様例/規格

例えば車載カメラシステムでは、信号と電源を同軸ケーブルで一緒に送るPoC（Power over Coax）技術が使われます。インダクタは高周波信号の流入を防ぎ、電源ラインの直流成分を適切に分離する役割を果たします。その他、下記のような使用例があります。

PoE（Power over Ethernet）

イーサネットで利用されるケーブルを用いて、給電・データ伝送を行う技術の事を指します。イーサネットケーブルを通してデータ通信を行い、IPカメラ、IP電話、PoE照明器具、他の電気製品への給電をすることができます。

PSE(Power Sourcing Equipment)とPD(Power Device)の動作原理が定義されています。PoE：IEEE 802.3af / POE＋：IEEE 802.3at で規定。
※PoEについては9月以降にコラムで扱う予定です。

音響機器

音質への影響も少ないため、オーディオ機器でも広く採用されています。
オーディオラインを通じてマイクやPAスピーカーなどに電力を供給しています。
（XLRオス-メスケーブルを使用して接続）
電圧は12V、18V、24V、48Vなどがありますが、48Vが一般的です。
ファンタム専用のON/OFFスイッチがある場合、「48V」等と書かれたボタンを押して使用します。

JEITA RC-8162 / IEC 61938:2018 で規定。

アンテナ

同軸ケーブルを通じて電力を供給する技術です。
インダクタは電源の出力ラインに使用します。無線信号を除去し、LDOレギュレータとの衝突を防止するために必要です。AMラジオ帯の下限周波数が148kHzであることを考慮すると、インダクタのL値は1mH程度が最適な値になります。
リモートアンテナ電源は、インダクタとコンデンサで構成されるローパスフィルタを介して供給されます。